The Little House -ちいさいおうち-
作:Virginia Lee Burton。
あらすじ
静かな田舎に建てられたちいさいおうち。デイジーやリンゴの木に囲まれ、いつも時間や季節の移り変わりを感じて幸せでした。夜になると遠くの街灯りを見て、都会はどんな所かと思いを馳せるのでした。
時が経ち、小さいおうちの周りに道路ができます。道路の周りにはガソリンスタンドや家などが建ち、大きなビルや学校やお店などがぎっしりと建ち並びました。
さらに時がたつと、小さいおうちの周りにはトロリーや電車が走るようになります。空気も汚れ、騒音もひどくなり、季節もわからなくなりました。地下鉄もでき、高層ビルも建ち並び、人々はちいさいおうちに目もくれずに慌ただしく過ぎ去ります。きれいなおうちはすっかりみすぼらしくなりました。
ある日、ちいさいおうちを作った人のひ孫のそのまた娘さんがやってきて、ちいさいおうちを田舎に移動させることにします。
大きな道、小さな道を超えて、鳥たちの歌う緑の草原にちいさいおうちはやってきました。壁もきれいに塗りなおされ、季節を感じ、家の手入れもしてもらえるようになって、平和な時間が訪れました。
英語学習者の視点から~覚えた単語や言い回し~
・thin old moon / thin new moon (欠けていく細い月 / 新月のあとの細い月)
・way off (離れた、遠くに)
・in the distance (はるか向こうに)
・swell (膨れる)
・brook (小川)
・coast ((そりなどで)滑走する)
・surveyor (測量者)
・dump (どさりと下ろす)
・tenement (借地、借家)
・elevated train (高架を走る電車;elevated=高い)
・tear down (取り壊す)
・crookedly (曲がって、歪んで)
・shabby (みすぼらしい)
お気に入り度:★★★★★
石井桃子さんが翻訳した「ちいさいおうち」の原作。最初の出版が1942年なので、かなりのロングセラーです。
日本の図書館で日本語版を見かけたとき、表紙が可愛くて気にはなったのですが、子供には退屈かと思ってちゃんと読んでいませんでした。文章量も多めだし、イラストも家の周りの風景ばかりだからです。
今回はじめて子供に読み聞かせてみると、おうちの表情(?)がどんどん変わっていく様子に気づき、「さっきまでにっこりしてたのに悲しい顔になってる!」と食い入るように見ていました。(私は字を追うのに一生懸命で、家の絵が顔になっていることにすら気づきませんでした・・・)
文章が全部理解できなくても、イラストを見るだけで十分に内容が伝わってきます。季節の移り変わりや、町の変わっていく様子が見事に描かれています。
「都市開発によって便利さと引き換えに失われるもの」について問題提起している本で、一部の読者には「都会は悪だという決めつけ」が不評のようです。
しかし、この本は、「都会はダメだ」などと一切言っていません。単に、車がたくさん通る、とか、高い建物に囲まれて真昼だけ頭上に太陽が見える、とか、街が明かるくて夜も星が見えない、という事実を伝えているだけです。(わずかに一文、「小さいおうちは都会に住むことが好きではなかった」と、あくまで小さいおうちの主観として都会の感想を述べている箇所があります。)
だからこそ、読み手にいろいろと考えさせるのかもしれません。
- 作者: ばーじにあ・りー・ばーとん,いしいももこ
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1965/12/16
- メディア: 大型本
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