The Giving Tree -おおきな木-
作:Shel Silverstein。
あらすじ
あるところに木がありました。木は男の子が大好きでした。
男の子は毎日木のところにやってきて、木に登ったり、枝でブランコをしたり、リンゴを食べたり、かくれんぼをしたりして遊びます。男の子も木が大好きでした。
でも、男の子は大きくなり、木のところにあまり来なくなります。
たまにやって来ると、「お金が欲しい」「家が欲しい」「舟で遠くへ行きたい」などと言い、昔のように木と遊びません。
木はそのたびに、「リンゴを売ってお金にしなさい」「枝を切って家を作りなさい」「幹を切って舟を作りなさい」と、大人になった男の子に自分自身を与え続けます。
木はそれで幸せでした。
すっかり年老いた男の子が来たときに、木は「もうあげるものが何もない」と悲しみますが、もはや欲しいものは何もない、ただ静かに休みたい、という男の子には、切り株がよい休憩場所でした。
木はとても幸せでした。
英語学習者の視点から~覚えた単語や言い回し~
特になし。
お気に入り度:★★★★★
大人向けの絵本だと思います。何度読んでも泣けます。子供への読み聞かせには向きません。
日本でも「おおきな木」のタイトルで有名です。日本語訳は、本田錦一郎訳(1976)版と、村上春樹訳(2010)版があります。本田版は今では入手困難かもしれません。
私は本田版しか読んだことがありませんが、人気のある絵本なので、2つの翻訳比較をしている個人ブログが多数あるようです。いくつか見た感じでは、本田版の方が人気がありそう。
特に物議をかもしているのが、男の子が遠くへ行く舟にするため、木が自分の幹を男の子に与える場面の一文:"And the tree was happy...but not really"。男の子の役に立てる嬉しさ、男の子が行ってしまう寂しさ、が短い文章で絶妙に表現されています。
私なりに直訳すると、「木は幸せでした・・・でも、心からではありませんでした。」というところでしょうが、本田訳も村上訳もどちらも直訳でなく、ちょっと解釈を加えてあります。
・本田訳:きは それで うれしかった・・・だけど それは ほんとかな。
・村上訳:それで木はしあわせに・・・なんてなれませんよね。
個人的には、本田訳の方が原文に近いように思います。木はまったく幸せでないわけではなく、ある種の幸福感は確かに感じているので、村上訳では否定しすぎのように感じます。
(もしかして、私の原文の解釈が間違っているのでしょうか?原文の意図が「木は幸せでした・・・でもそれは本当ではありませんでした。」ならば、村上訳の方が近そうです。でも、木の心情を考えると、この解釈には違和感があります。)
線画のシンプルなイラストも、読み手にいろいろと想像させる余地を与えていて、本の内容ととても合っています。使われている単語も文法も簡単なので、すっと内容が頭に入ってくるのもいいです。
手元に置いて、何度も読み返したい絵本です。
- 作者: シェル・シルヴァスタイン,Shel Silverstein,村上春樹
- 出版社/メーカー: あすなろ書房
- 発売日: 2010/09/02
- メディア: ハードカバー
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